2009年11月21日土曜日

24の物語

『悔いのない生き方に気づく 24の物語』を読みました。
終末医療の現場で常に「死」と向き合っているホスピスの人たちがそっと教えてくれた本当にあった涙の感動ストーリーです。(T_T)


呼吸器をつけたままの状態で入院している高齢のおばあさんがいました。
彼女は時々、目を開けることはあるのですが、言葉をしゃべることはありません。
いつも、子どものような目でどこかを見ているようでした。
彼女のご主人も高齢で、人の手を借りないと歩けない状態でしたが、息子のお嫁さんに付き添われて、いつもお見舞いに来ていました。
おじいさんはお見舞いに来ると、おばあさんの顔をのぞき込んでは

「ほれ、目を開けろよ。オレだよ、オレ。分かるか? 何とか言えよ」

と、同じ言葉を何度も繰り返していました。
そして、震える手でティッシュを掴んで水に濡らすと、彼女の口元をそっと拭いてあげていました。
看護師さんが
「そんなに拭いたら、皮がむけてしまいますから」
と止めても、おじいさんは大切なものを扱うように、そっと唇を拭き続けていました。

看護師さんが付き添ってきたお嫁さんに
「仲の良いご夫婦ですね」
と話すと、お嫁さんは
「とんでもない。いつも仲が悪くて、けんかばかりしていたんです。おばあさんが倒れてからおじいさんの優しい言葉を聞いた時、ショックでおじいさんも頭がおかしくなってしまったと誰もが思ったぐらいです」
と話しました。
おじいさんはおばあさんに対していつも厳しくて、自分からは何もしない人だったそうです。
近くにティッシュがおいてあっても、自分で取らないで「オイ、取れ」とおばあさんに命令していました。
おじいさんが一生懸命におばあさんに尽くす姿を見ていた看護師さんには、このご夫婦の仲が悪かったとは、とても信じられませんでした。看護師さんにその時の様子を詳しく聞くと

「おじいさんがおばあさんとけんかをする姿は想像できませんでした。
おじいさんは小さく背中を丸めながら、本当に寂しそうにおばあさんの唇を拭き続けていたんです。
けんかすることを当たり前にしてきたおじいさんの生活が当たり前でなくなってしまって、おばあさんがどんなに大切な存在だったのかが分かったと思います」

と話してくれました。
本当に心が通じていなかったら、毎日のようにけんかをすることはできません。
文句や悪口を言っても一緒にいてくれる人、本当に大切な人だと思います。